「時雨」について
- 新水会
- 2021年4月28日
- 読了時間: 2分
更新日:2021年7月21日
「時雨」とつく名の唄はいくつか教わりました。
「磯浜しぐれ」「よさこい時雨」…
また端唄によく引用される宮城の民謡「さんさ時雨」というのもありますね。
「磯浜しぐれ」
〽風薫る 茜ぼかしの沖空みれば
夫婦鳥かよ ねぐらへ急ぐ
待っていてよと別れていった
アチャさんお国は海の果て
浜じゃえ 浜じゃ網ひく綱もひく
わたしゃ想いの網をひく
ひいて詮無い恋の綱
今年ゃ戻ると聞こえる声に 耳をすませば
西海の海鳴りばかり 風ばかり
調べる中で、「磯浜しぐれ」と「山中しぐれ」は同じ方が作詞されていることを知りました。土屋健さんという方です。(調べずとも、家元にお尋ねすればすぐにわかることでしたが…)
日本伝統文化振興財団のHPで検索すると、沢山作詞をされていることもわかりました。
こんなに作詞をよくされる方なら何かまとめた著作があるのでは…と思い、今度は「日本の古本屋」で検索したところ、ありましたありました。
「随筆 小唄おぼえ書」昭和29年発刊

早速取り寄せました。
序には西条八十と初代吉右衛門が一筆寄せています。「川風に」「十六夜清心」など私も知っている小唄の由来や唄い方の技巧について、洒脱な語り口で書かれていて、とても楽しい本でした。
当時は戦後復興ならんとすという時期ですから、ゴルフとともに小唄がとても流行ったのだそうです。皆がこぞって覚えたての小唄を披露したがったといいますから、現代の我々からするとなんとも隔世の感があります。
また話題が逸れてしまいました。今回は「時雨」がテーマでした。
土屋さんの著作には自身の作詞についての言及はなく、残念ながら「山中しぐれ」についての情報は得られませんでした。しかし「時雨」はどうやら初冬に限るわけではなさそうです。例によってまた古語辞典で調べてみると、時雨には「初冬にさっと降る雨」という意味の他に「涙をこぼして泣く様」という意味があるのを知りました。
確かに山中も磯浜も、別れゆく人やまだ来ぬ人を想う悲しい曲ですね。
もちろん、全ての端唄・小唄がいずれかの季節に分類されるわけではありませんが、その歌詞が醸し出す風情を思い描くことはとても大切です。歌い手の思う風景によって、曲の印象が変わってくるかもしれません。それは音曲の魅力の一つでもあると思います。
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